人は誰でも年をとるにつれて若い頃には想像もしなかった様々な法的な問題に遭遇し、時にはトラブルに発展することもあります。
親の施設費を引き出そうとしたら金融機関から本人が来ないと払い戻しができないと言われた。親族が遠方にいて今後の生活を頼める人がいない。など高齢化社会特有の問題が生じています。
これらの高齢化社会の課題に対応する法的な予防法を一部ご紹介します。
任意後見
将来、自分の判断能力が衰えたときにそなえて、あらかじめ支援者(任意後見人)を選んでおく制度です。判断能力が不十分な状態になったあとの生活や財産管理に関する事務について、あらかじめ代理権を付与する契約です。
見守り契約、任意代理契約
任意後見契約は交わしたが、いつから任意後見を始めるかの見極めは非常に重要です。そこで、見守り契約といって元気なうちは、電話や自宅訪問により何か変わったことはないか定期的に確認する方法もあります。
また、当事者間で合意した特定の行為を代理権によって支援する契約を結ぶこともできます。これらは移行型と言われ、任意後見とセットで契約することになります。
法定後見
すでに判断能力が衰えている方のために、家庭裁判所が適切な支援者を選ぶ制度です。判断能力の程度によって「補助」「保佐」「後見」に分けられます。
- 後見…判断能力が非常に減退している場合(ほとんど判断できない方を対象としています)
- 保佐…判断能力にかなり衰えがある場合(判断能力が著しく不十分な人を対象としています)
- 補助…判断能力に少し衰えがある場合(判断能力が不十分な人を対象としています)
家庭裁判所が本人の状況を総合的に判断して、本人の親族や司法書士等の専門職を選任します。
*当事務所では、成年後見人選任の申立てから実際の成年後見人就任まで幅広く対応しています。
日本の家族構成が核家族化したことにより、現在は人の死というものが身近に感じられなくなったと言われています。考えなくていいならあまり触れたくないテーマでもあります。
しかしながら、自分自身や親の相続を考えることによって、これまで自分か築き上げてきた財産を改めて把握できます。また、自分の希望に沿って財産の配分を考えることによって、どこか漠然と抱えていた不安を将来への安心へとつなげることができます。
相続は遺言が基本的に優先するので、遺言を残すことは有益な相続対策と言えます。
相続放棄
相続財産には、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も含まれます。
そのため、借金は相続したくない!あるいは、訳あって相続人になりたくない!といった場合は、家庭裁判所に相続放棄の申立てをする方法があります。
相続放棄の申立ては、相続開始があったことを知ってから3ヵ月以内に行う必要があります。
不在者財産管理人
相続人の中に行方不明の人がいる場合、遺産の分割協議ができずに困ってしまいます。
この場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任の申立てをします。そして、裁判所から選ばれた財産管理人と手続きをすすめていくことになります。
遺言書作成
遺言がない場合の相続手続きとしては、まず相続人の全員で協議を行い、遺産分割協議書というものを作成し相続人全員の印鑑証明書をつけます。この流れが想像以上に大変で、なかなか話し合いがまとまらないこともあります。
一方、遺言書を残すことにより、相続トラブルを防止し、残された家族の相続手続きを軽減することができます。そして何より、自分の思いを家族に伝えることができます。
遺言は自筆証書遺言や公正証書遺言といった形式がありますが、要件が厳格に規定されています。作成にあたって、一度司法書士にご相談されることをお勧めします。
司法書士は、金融機関等で行われる不動産取引の現場に立会います。これは取引の安全に資するためです。
不動産というのは最も高額な財産なので、しっかりと不動産に関する権利関係を把握し保全することが重要となります。実際、不動産の名義が先代のままになっていて現状と一致していなかったり、住宅ローンを全て返済したが登記簿上担保が残っていたりするケースがあるからです。
不動産に係る名義や担保のこと、司法書士にお尋ねしてみてはいかがでしょうか?
不動産取引の立会
不動産を売買により取得する際、不動産の引渡しと売買代金の支払いは同時に行われるのが通常です。また、対象不動産に従前よりついている担保権なども消した上で、買主さんに引渡します。
司法書士はレフリー的立場でこの現場に立会って、登記申請の代理や、法務局に提出するための書類の作成、当事者の意思確認・本人確認を行います。
土地や建物の名義変更
不動産の名義人が亡くなっても自動的に名義変更されることはありません。よくあるのは、固定資産税の支払人が変わったので、名義も承継者に変わっていると思っていることです。
権利関係が複雑になる前に、司法書士に相談されることをお勧めします。
担保の抹消
住宅ローンを完済した場合は、登記上も担保の抹消手続きが必要となります。
これまでのローンを完済すると金融機関から抹消登記に必要な書類が送られてきますので、その際はお早めに手続きを行って下さい。
賃貸借契約、知人へのお金の貸付など、日常生活においてもトラブルが発生することはあります。トラブルが起きた場合には、お互いの言い分を法的な視点から検討することで、問題解決の方向が見えることがあります。また、第三者が間に入ることで、解決に至る場合もあります。
トラブル解決の方法として、裁判所での調停・訴訟(裁判)を検討することも必要です。
法務大臣の認定を受けた司法書士は、140万円以下の事件について、代理人として交渉や調停・訴訟手続を行うことができます。
手続き費用については、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度の分割払いが利用できる場合があります。
調停
裁判所を通した話し合いの手続です。調停委員が間に入り、お互いの意見を調整し問題の解決を目指します。裁判所では、相手方と顔を合わせないよう待合室を分ける、事情や意見の聞き取りを相手方とは別にするなど、落ち着いて話しができるよう配慮しています。
訴訟(裁判)
法廷で事実関係・法律上の根拠等の主張・立証を行い裁判官の判断を仰ぐ手続です。法的な主張も必要であるため、訴えを起こす場合は事前にご相談頂いた方が良いと思われます。
また、被告(訴えられた方)となった場合にも、まずご相談ください。
生活費が足りず借金を続けている、返済が追いつかず借り入れを止められない、こういった状況にある場合には債務を整理して借入をせず生活ができるよう生活を見直すことが必要です。
債務整理の方法で主なものは、任意整理、個人再生、自己破産です。しかし、どの手続きをとれるかは世帯の状況にもよりますし、また、本人の希望を無視して手続を進めることもできません。
手続き費用については、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度の分割払いが利用できる場合があります。
任意整理
各債権者と個別に交渉し、債権者ごとに今後の支払の条件を取り決めます。
月々の返済額は、世帯の収入・生活費を考慮し、相談のうえ決定します。
なお、債権者の皆さまには、今後の利息を免除してくれるようお願いしています。
個人再生(小規模個人再生、給与所得者等再生)
裁判所を通した手続です。債務の残高を基準に従い減額した上で、原則3年間の分割払いを行います。債務の残高など状況にもよりますが、月々3万円の支払ができれば、債務整理の選択肢として個人再生が検討できます。
また、個人再生には、住宅ローンについて住宅を維持するための特則があります。
自己破産
裁判所を通した手続です。債務者本人の財産のうち、債権者に分配出来るものは現金化され配当されます。残額については支払義務の免除(免責)を求めます。世帯の収入・生活費を考慮し債務が支払不能である場合には、自己破産を検討します。
なお、ギャンブルや浪費がある場合は免責されない可能性があります。
料金の目安
任意整理 | 3万円+2社目から2万/1社+税+実費 |
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再生 | 25万円+税+実費 |
破産 | 20万円+税+実費 |
※法テラスの法律扶助制度を利用する場合は、費用は法テラスの基準になります。 |